フローリングを歩いていて、ひやりとした。段差もないところで足を取られた。ご家族から、そんな話を聞いたことはないでしょうか。
実は、室内で転ぶきっかけとして見落とされやすいのが靴下です。滑りやすい素材のまま歩くと、足の裏が床をつかめません。かといって、すべり止めが付いていれば安心かというと、そう単純でもないことが最近の研究でわかってきました。
この記事では、「なぜ靴下で転ぶのか」という理屈から、70代・80代のご本人が自分で履ける一足の選び方までをまとめました。おはがきで届いたご要望と、キテコで実際にお選びいただける商品も併せてご紹介します。
この記事の内容
靴下のまま歩くのが、いちばん転びやすい
介護施設に設置されたカメラで、実際の転倒の瞬間を記録して分析した研究があります。58歳から98歳(平均82.8歳)の入居者118名、転倒300件を映像で確認したものです。
そのうち履き物が関係した転倒は40件。いちばん多かったのは、靴でもスリッパでもなく「靴下だけを履いていた」ケースで14件、履き物が関係した転倒の74%を占めていました。さらに靴下での転倒13件、実に93%が「すべり止めの効きが足りなかったこと」を原因と判定されています。
数字だけ見ると、靴下そのものが悪者のようにも読めます。けれど同じ研究には、もうひとつ気になる記録が残っていました。すべり止めが足りずに転んだ13件に対して、すべり止めが効きすぎたために転んだ例も1件あったのです。
つまり、床をつかむ力は弱すぎても強すぎても危ない。ゴムがべったりと足裏全面を覆っていれば安心、という話ではないわけです。
ここまでの結論:室内で歩く時間が長い方ほど、すべり止めの付いた靴下に替える価値があります。ただし「付いていればよい」ではなく、どこに・どのくらい付いているかを見てください。
なぜ、靴下は床をつかめないのか
綿やウールの糸は、それ自体がなめらかです。とくにワックスのかかったフローリングや、施設のリノリウムの床では、足裏と床のあいだにほとんど摩擦が生まれません。
やっかいなのは、転びやすい場面が「歩いているとき」だけではないことです。椅子や車いすから立ち上がる瞬間、体重が前に移った足がつるりと前へ滑る。方向を変えようと踏み込んだとき、足だけが残る。高齢になるほど、とっさに一歩を踏み出して体勢を立て直す力が落ちますから、その一瞬が転倒につながります。
出典:Menz HB, et al. Footwear and falls in long-term residential aged care facilities: an analysis of video capture data(Gerontology 70:611-619, 2024)
転ばない靴下を選ぶ5つのポイント
床をつかむことと、無理なく履けること。この2つは、しばしば逆方向に引っ張り合います。両方を満たす一足を見つけるために、次の順で確かめてみてください。
① すべり止めが「かかと」まで回っているか
すべり止めのプリントは、つま先寄りの前足部にだけ付いている商品が少なくありません。歩くときはそれで足りますが、立ち上がりや方向転換でいちばん滑るのは、かかとが着いた瞬間です。前足部とかかとの両方、少なくともかかとに回り込んでいるものを選んでください。
逆に、足裏がゴムで一面覆われた製品は、じゅうたんの上でつま先が引っかかることがあります。歩き方に迷いが出ている方ほど、点や線で分散して付いているタイプのほうが足が出やすくなります。
② 履き口のゴムをやめる
脱いだあと、足首に赤い輪が残っていませんか。あの跡は、締めつけが強すぎる合図です。高齢になると皮膚が薄くなり、血のめぐりも落ちますから、同じ靴下でも当たり方が変わってきます。
いま増えているのが、履き口にゴムを使わず、糸の編み方だけで留める作りの靴下です。ずり落ちにくさは残しつつ、締めつけ跡が付きません。おはがきでも「しめつけがないものを、いつも要求されます」というお声が届いています。
③ 足のサイズではなく「足口の実寸」で選ぶ
むくみのある方が普通の靴下を選ぶと、22〜24cmと書いてあっても入りません。見るべきなのは足の長さではなく、足首まわり・ふくらはぎ・足の甲の太さです。
ご自宅にメジャーがあれば、いちばん太いところを一周させて測ってみてください。夕方のほうが太くなりますので、むくみが気になる方は夕方に測った数字を基準にすると失敗しません。特大タイプなら足口20〜50cmまで対応する商品もあります。
④ ご本人が自分で履けるか
前かがみになるのがつらい、指先に力が入らない。そうなると、靴下は毎朝の関門になります。選ぶときは3つ見てください。履き口が広いか。生地がよく伸びるか。つま先に縫い目の出っ張りがないか。
つま先の縫製がない作りは、指が引っかからずすっと通ります。なお5本指ソックスは指のあいだが蒸れにくい利点がありますが、指を1本ずつ入れる必要があるため、片手で、あるいは手元が見えにくい状態で履くのは難しくなります。
⑤ 名前が書けるか、乾燥機に入るか
施設に入られる場合、持ち物すべてに記名が要ります。靴下は小さく、洗濯で他の方のものと混ざりやすいので、足裏に名前を書ける面があると職員の方が仕分けしやすくなります。
洗濯は施設の大型乾燥機にかかることが多く、対応していない靴下は縮んで履けなくなります。乾燥機の可否は商品ページに書かれていないことも多いので、迷ったら対応と明記されているものを選んでおくと安心です。
おはがきで届いたご要望に応えて
キテコには、商品に同封したおはがきでご意見が返ってきます。靴下について書かれていたものを読み返すと、驚いたことに「転んだ」という言葉は一通もありませんでした。代わりに並んでいたのは、締めつけと、むくみと、履きにくさです。
いただいたお声(原文より)
- 「くつ下の販売もしていただけるとうれしいです。足がむくんでいるので、しめつけのないくつ下希望です。今は、くつ下のみちがう所で買っていますが、販売していただけると、洋服と一緒に購入できてうれしいです」
- 「母親の服で困っているのは、防寒対策です。くつ下や下着・レッグウォーマーなど、ちくちくしなくて、しめつけがないものを、いつも要求されます。販売店が少く、いつも困っています」
- 「自分ではく時に、すべりが良いズボンがいいです。くつ下がひっかかり、はきにくいズボンは、あたたかくて良いのですが困る事もあります」(84歳女性)
- 「ハイソックスのような少し長めのソックスがあると有難いです。車イスに座っていると足首やズボンの裾から出て寒そうなので」(91歳女性)
- 「くつ下は、指が広げれる幅が欲しい。ゴムなしきつくない、むくまない。1足あたり1000円以下が良い」(紳士・ご本人)
転倒の不安は、たいてい言葉になる前に「きつい」「履きにくい」の形で先に現れます。締めつけがつらいから緩い靴下を選び、緩いから足の中で回ってしまい、すべり止めがかかとから外れる。おはがきの要望と転倒対策は、別々の話ではありませんでした。
そこで今回は、しめつけないことを全商品の前提に置いたうえで、すべり止めの有無で並べています。「1足1000円以下」というご要望にも、990円の婦人用と990円の紳士用でお応えできました。
転倒予防におすすめの靴下8選
前半5点がすべり止め付き、後半3点はすべり止めのない「締めつけ対策」の靴下です。室内を歩かれる方には前半から選んでください。
前足部とかかとの両方にすべり止め・日本製の3足組

婦人用 口ゴムなし しめつけない 足裏しっかり滑り止め付き 無地 3色セット 日本製
3,480円(税込)
- 前足部とかかとの両方にすべり止め。立ち上がりの瞬間まで支える
- 履き口にゴムを使わない幅広設計で、足首に跡が残りにくい
- 春夏用(綿・ナイロン・ポリウレタン)と秋冬用(アクリル・ナイロン・毛・ポリウレタン)を選べる
- ローズ・ピンク・グレーの3色組。毎日履き替えても回る枚数
- 日本製・フリーサイズ
990円・つま先の縫い目なしで自分で履ける一足
足口50cmまで・むくんだ足にすべり止めを届ける
足裏に名前を書ける・施設の洗濯に出す方へ

婦人用 口ゴムゆったり しめつけない 名前が書ける 滑り止め付き 花柄靴下 2色セット 日本製
3,980円(税込)
- 足裏に大きな記入スペース。にじまず、職員の方が見つけやすい
- かかと部分にすべり止め加工
- 幅広の履き口で、締めつけ跡が付きにくい
- クリームとラベンダーの花柄2色組。名前を書いても野暮ったく見えない
- フリーサイズ/綿・アクリルほか/日本製
紳士用のすべり止め付き・綿85%で蒸れにくい
ここから先はすべり止めなし:06〜08は締めつけ対策の靴下です。室内をよく歩かれる方は、01〜05と組み合わせてお使いください。
880円・締めつけ跡が残る方の毎日用
990円・「1足1000円以下」のご要望にお応えして
むくみが強く、どの靴下も入らない方へ
シーン別・どれを選べばいいか迷ったときのガイド
並べてみると、どれも似て見えるかもしれません。決め手になるのは、その方が一日のうちでいちばん長く過ごす場所です。
ご自宅のフローリングを歩かれる方へ
いちばん転倒の危険が高いのは、なめらかな床を靴下だけで歩く場面です。前足部とかかとの両方が守られているものを選んでください。
ご自宅の室内歩行におすすめ:口ゴムなし 足裏しっかり滑り止め付き 3色セット(3,480円)。3足あるので、洗い替えを気にせず毎日すべり止め付きで過ごせます。
足がむくんで、靴下が入らない方へ
むくみのある足に普通のサイズを無理に履かせると、食い込んで血のめぐりをさらに妨げます。まず入る太さを確保してから、すべり止めの有無を考えてください。
むくみ+室内歩行におすすめ:男女兼用 特大サイズ靴下 すべり止め付(1,760円)。足口50cmまで対応し、乾燥機にも出せます。
介護施設・デイサービスをご利用の方へ
施設では洗濯物がまとめて回りますから、名前が読み取れないと戻ってこないことがあります。靴下は特に紛れやすい持ち物です。
施設の持ち物におすすめ:名前が書ける 滑り止め付き 花柄靴下 2色セット(3,980円)。足裏の記入スペースが大きく、かかとにすべり止めがあります。
男性で、締めつけが苦手な方へ
紳士用は選択肢が少なく、探しあぐねているというお声をよくいただきます。すべり止めが必要なら05、締めつけ対策だけなら07が目安です。
紳士におすすめ:紳士用 極上しめつけません綿混ソックス(スベリ止付)(1,100円)。綿85%で一日履いても蒸れにくい仕様です。
ほとんど座って過ごされる方へ
車いすやベッドで過ごす時間が長い場合、すべり止めより優先すべきは締めつけないことと、足首まで冷やさないことです。丈の長さも見てあげてください。
避けたほうがよい:すべり止めのない靴下でフローリングを歩き回ること。サイズが合わないまま履いて足首に跡が残ること。そして、すべりやすいからと靴下を重ね履きすること(足の中で回って、かえって滑ります)。
まだお応えできていないこと
正直に申し上げると、キテコの靴下にも足りていないところがあります。今後の品揃えの宿題として、そのまま書いておきます。
- 紳士用のすべり止め付きが1点しかありません。婦人用には無地・花柄・特大とご用意がある一方、男性の選択肢が追いついていません。
- 乾燥機対応と明記できているのが、8点のうち03だけです。他は縮みにくい素材を使っていても、乾燥機の可否まで確認が取れていません。施設で使われる方には大事な情報なので、順次確かめてまいります。
- ハイソックス丈のご要望にお応えできていません。車いすで座っていると裾から足首が出て寒い、というお声をいただきましたが、すべり止め付きで丈の長いものがまだありません。
- 指の広がる5本指で、片手でも履けるものがありません。「指が広げれる幅が欲しい」というご要望と、「自分で履ける」を両立する一足は、まだ見つけられていません。
お困りのことがありましたら、商品に同封のおはがきでお知らせください。この記事の商品も、いただいたお声から選び直したものです。
よくある質問
すべり止めが付いた靴下なら、転倒を防げますか?
すべり止めのない靴下より安全に近づきますが、それだけで防げるわけではありません。介護施設の転倒映像を分析した研究では、靴下での転倒の93%がすべり止め不足を原因としていた一方、効きすぎたために転んだ例も報告されています。足裏全面がゴムで覆われたものより、前足部とかかとに分けて付いているものが歩き出しやすくなります。あわせて、床の上のコード類や段差、めくれたラグなど、住まいの側も見直してください。
足がむくんで、普通の靴下が入りません。どうすればよいですか?
足の長さではなく、足首まわり・ふくらはぎ・足の甲のいちばん太いところをメジャーで測ってください。むくみは夕方に強くなるため、夕方の数字を基準にすると失敗しません。キテコの特大タイプは足口20〜50cmまで対応しています。無理に細い靴下を履かせると食い込んでかえって足に負担がかかるため、まず入る太さを確保してください。
自分で靴下が履けなくなってきました。選び方はありますか?
履き口が広いこと、生地がよく伸びること、つま先に縫い目の出っ張りがないこと。この3つがそろうと、前かがみになる時間が短くなります。つま先の縫製がない作りは指が引っかからずに通ります。5本指ソックスは指を1本ずつ入れる必要があるため、ご自分で履かれる方には向きません。
介護施設に持っていく靴下に、名前はどこへ書けばよいですか?
履いたときに隠れて、洗濯でこすれにくい足裏か、履き口の内側が適しています。靴下は小さく他の方のものと混ざりやすいので、職員の方が畳みながら見つけられる位置がよいでしょう。足裏に記入スペースを設けた商品なら、書いた名前がにじみにくく読み取りやすくなります。持ち物の準備全体については、老人ホーム入居の持ち物の記事もあわせてご覧ください。
靴下は何足くらい用意しておけばよいですか?
施設に入られる場合は、洗濯が数日に一度になることを見込んで7足前後が目安です。ご自宅でも、すべり止め付きは洗い替えを含めて3足あると、乾かないからと普通の靴下で過ごす日をなくせます。3足組の商品を選んでおくと、色違いで揃えやすくなります。
まとめ
- 施設で記録された転倒映像の分析では、履き物が関係した転倒のうち靴下着用時が74%と最多だった
- すべり止めは「付いていればよい」ではなく、かかとまで回っているか、足裏全面を覆いすぎていないかを見る
- 締めつけ跡が残る方は、履き口にゴムを使わない靴下に替える
- むくみのある足は、靴のサイズではなく足口・ふくらはぎの実寸で選ぶ(夕方に測る)
- 施設で使うなら、足裏に名前が書けること、乾燥機に出せることを確かめておく
- キテコには990円から選べるすべり止め付きと、足口50cmまでの特大サイズをご用意しています
転ばないでほしい、という気持ちは、たいてい言いにくいものです。心配していると伝われば、ご本人は自分の衰えを突きつけられたように感じるかもしれません。靴下は、そこを黙って引き受けてくれます。新しい一足をそっと引き出しに足しておくだけで、明日の朝が少し変わります。




























